【ニュースリリース】環境配慮型の原料「セルロースナノファイバー(CNF)」活用に関する技術資料を公開
環境配慮型の原料「セルロースナノファイバー(CNF)」活用に関する技術資料を公開
表面繊維化セルロース粒子による、混合油の常温ワンステップ乳化が可能に!
2022年6月28日
株式会社スギノマシン(富山県魚津市、代表取締役社長:杉野 良暁)は、自然由来のセルロースを原料としたナノファイバー*1(商品名:BiNFi-s)の用途開発に関する技術資料(テクニカルレポート)を公開しました。
今回は、セルロースナノファイバー(CNF)の製造技術を応用し開発した、シングルマイクロサイズの「表面繊維化セルロース粒子(略称:F25)」による乳化について解説しており、界面活性剤を使用しない乳化や、混合油の常温ワンステップ乳化による製造工程の簡略化など、役立つ情報をまとめています。
スギマシンが提供するセルロースナノファイバー「BiNFi-s」
1.環境配慮型の原料としての「セルロース」活用
近年、海洋プラスチックや石油資源の枯渇などの問題から、SDGsに沿って地球環境の資源を大切に使用し、持続可能社会を目指す取り組みが重要視されています。
セルロースは植物に含まれる自然由来の素材で、セルロースをナノサイズに細かく解した「セルロースナノファイバー」は、プラスチックやゴムなどの補強用添加材、分散安定剤、ケーキング防止剤、化粧品用素材、油脂の増粘剤、塗料の割れ防止剤、衣類の改質剤などに活用されています。
2.表面繊維化セルロース粒子(F25)とは
本開発品は表面が繊維化された直径7μm程度のセルロース粒子で、水分散体として提供します。表面が繊維化されていることで、その比表面積は70m2/gと、市販のセルロース粉末や結晶セルロースの約20倍にもなり、各種溶媒への分散安定性が向上します。
また、複数混合油のワンステップ乳化や充填結合剤としての利用など、CNFとは異なる用途展開が期待されます。濃度25wt%の水分散体の外観は白色のペースト状であり(図1)、これを乾燥化して観察すると粒子表面に繊維状構造が確認できます(図2、および図3)。
また、粒子であるため分散液の粘度が低くハンドリング性が良好で、200rpmの簡易なプロペラ撹拌で5~10分間混合することで、均一分散が可能です。
3. 技術資料(テクニカルレポート)の内容(抜粋)
- 界面活性剤を使用しない乳化が可能
乳化とは水と油のように本来は混ざり合わないもの同士が、どちらか一方に分散し、均一に安定化した状態です。F25は界面活性剤を添加することなく水と油を乳化できます。
乳化方法としては、ペースト状のF25を水相に十分に分散させた後に、油相を加え混合します。F25の最適な添加量は乳化物の油相割合によって変わります。また、F25は温度によらずに乳化できるため加温は必要ありません。
- 70wt%オイル乳化物の粘度調整(低粘度~高粘度まで)
70wt%流動パラフィンを含む乳化物について、F25の添加濃度による粘度変化の実験を行いました。わずか0.5wt%添加するだけで安定した乳化物ができており、低粘度でありながらオイル割合が高い乳化物を作製できます。さらに、F25の添加濃度を増やすことで乳化物の粘度がリニアに増加していきます。このことから、F25の添加濃度を調整することで低粘度から高粘度まで、粘度調整を行うことが可能になります。
- 油種を選ばない乳化
一般的に安定した乳化物を得るにはHLB方式*2による界面活性剤(乳化剤)の選定が重要ですが、F25では対象となる油種を選ぶことなく安定した乳化が可能です。
- 混合油の常温ワンステップ乳化で製造工程の簡略化に貢献!
界面活性剤を使った乳化物は複数の油性成分により構成されていることが多いため、各物質の相溶性を見ながら、段階的な乳化が必要ですが、F25は油種に影響を受けないため、複数油種を混合してのワンステップ乳化が可能です。
4. 技術資料(テクニカルレポート)について
今回の研究結果は、スギノマシンが発行している技術資料(テクニカルレポート)で詳細を報告しています。各種実験データを掲載し、実用化に向けた技術情報を紹介しています。このほかにも、キチン・キトサン・シルクナノファイバーに関する研究結果や応用事例をレポートにまとめて発行しています。
テクニカルレポートはスギノマシンのWebサイトからダウンロードいただけます。
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6.用語・補足
*1 ナノファイバー
繊維を直径 100 nm以下、長さ 数µmのサイズへ微細化したもの。
―本件に関するお問い合わせ先―
■株式会社スギノマシン■
経営企画本部 新規開発部 開発プロジェクトグループ
TEL:(076)477-2572