【ニュースリリース】球面用スパロールホルダ 「SES-AH(アングルヘッドタイプ)」の販売を開始
2025年10月14日
株式会社スギノマシン(富山県滑川市)は、自動車部品などに見られる球面形状ワーク(ボールスタッド、タイロッドエンド*¹など)に対し、高精度な表面仕上げを実現するローラ・バニシング*²ツールのホルダを開発しました。本商品は、専用機を必要とせず、一般的なミーリング機能付きNC旋盤に直接取り付けて使用でき、部品に求められる表面粗さの安定性・加工精度の向上・工程集約を一台で実現。新たな設備投資を抑えつつ、加工品質と生産効率の両立に貢献します。
本商品は、10月22日(水)~10月25日(土)にポートメッセなごやで開催される工作機械見本市「メカトロテックジャパン 2025」に出品します。
1.装置概要
当社の「スパロール」は、ローラで金属表面を押し均してなめらかに仕上げる鏡面仕上げ工具(ローラ・バニシングツール)です。ローラによる転圧加工により、金属表面を塑性変形させ加工面をなめらかに仕上げ、同時に表面改質(耐摩耗性・疲労強度の向上など)を実現します。それにより、自動車部品に求められる生産性・耐久性・安全性の向上に大きく貢献します。
今回発売した本商品は、ボールスタッドやタイロッドエンドなどに代表される球面形状を含む駆動部品に対して、高精度な表面仕上げを可能にします。ミーリング機能(切削加工の一種)が付いた一般的なNC旋盤に直接取り付けて使用可能な設計となっており、専用装置や複雑なユニットを必要とせず、既存設備へのスムーズな導入が可能です。そのため、新たな設備投資やライン変更を伴うことなく、短期間・低コストで生産性を向上させることができます。
2.開発背景
製造業を取り巻く環境は市場ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短縮、受注の小ロット化などにより大きく変化しています。これに伴い、多品種少量生産への柔軟な対応、加工リードタイムの短縮、製造コストの最適化が、業種を問わず共通の課題となっています。また、人手不足や熟練技能者の減少により、現場では段取り回数の削減や工程集約による効率的な設備運用がより一層求められるようになりました。
ボールスタッドやタイロッドエンドといった自動車の駆動部品は、球面形状が不可欠であり、加えて高精度かつ高品質な表面仕上げが求められるため、加工難易度が非常に高い領域です。これまで球面形状の高品質加工には、熟練の技能を必要とする専用機に依存することが多く、導入コストや運用負担が大きな課題でした。
そこで当社は、既存のNC旋盤設備を使って球面形状を加工できるツールを開発しました。本商品はシンプルな構造でありながら、高い加工精度と信頼性を兼ね備えており、多くの製造現場におけるコスト効率の良い品質向上を支援します。
3.特長
(1)高速加工で高品質な表面仕上げ
複数のローラでバニシング加工を行うマルチローラ構造を採用し、3~6秒でRz(表面粗さを示す指数)0.8μm以下の鏡面仕上げが可能です。
高速加工と優れた表面品質を両立し、生産性向上に貢献します。

加工例
(2)汎用ミーリング付きNC旋盤への対応
専用装置を必要とせず、一般的なミーリング付きNC旋盤に取り付けるだけで球面形状のバニシング加工が可能です。
汎用アングルホルダと比べてコンパクトで低背設計となっており、機械内での工具取り回しが容易で、加工時の取り扱い性を大幅に向上させています。
(3)簡単なセッティングと操作性
短時間でツールを駆動機に取り付けられ、簡単にセッティングとNCプログラムの作成ができます。
作業者の経験や感覚に依存しない安定した段取りと立ち上げを実現します。数値化された加工条件は、量産加工でも安定した品質に寄与します。
4.仕様
商品名 | 球面用スパロールホルダ SES-AH(アングルヘッドタイプ) |
ツールサイズ(mm) | 幅200×奥行95×高さ153 質量6.5kg |
対象サイズ | SΦ10~40 |
販売開始 | 2025年11月~ |
テスト受注開始 | 2025年11月~ |
出展予定 | MECT 2025(メカトロテックジャパン 2025) 会期:2025年10月22日(水)~25日(土) 会場:ポートメッセなごや URL:https://mect-japan.com/2025/ |
5.用語・補足
※1 ボールスタッド/タイロッドエンド
球可動をもつジョイント部品で、ホイールとステアリング機構を繋ぐ役割を担います。走行中の振動や操舵角度の変化に追従する必要があり、いずれも走行性能、操舵安定性、安全性に直結する重要保安部品となります。
※2 バニシング加工
バニシング(Burnishing)は、切削や研削などの削り取る加工とは異なり、金属表面に工具を押しつけて塑性変形を利用して平滑に仕上げる加工法です。ローラで転圧することで、微細な凹凸をならし、表面粗さの改善と加工硬化による耐久性向上が得られます。また、工具摩耗が少ないことから、加工の繰り返し精度に優れることも特長です。
―本件に関するお問い合わせ先―
■株式会社スギノマシン■
精密機器事業本部 掛川生産統括部 掛川生産部 設計課
TEL:(0537)24-8181