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【ニュースリリース】少量のCNFを添加した炭素繊維強化プラスチックの中間材料(プリプレグ)を開発

少量のCNFを添加した炭素繊維強化プラスチックの中間材料(プリプレグ)を開発
―プリグレグを成形材料として曲げや衝撃強度の約20%向上を実現―


2023年9月29日

株式会社スギノマシン(富山県滑川市、代表取締役社長:杉野 良暁)は、自社のセルロースナノファイバー*1(商品名:BiNFi-s)を樹脂と複合化し、その樹脂を含浸させた炭素繊維強化樹脂(CFRP)のプリプレグ*2(中間材料)を開発しました。このプリプレグは、2023年10月4日(水)~6日(金)に幕張メッセで開催される高機能素材Weekの、当社、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)および委託製造先の日精株式会社(大阪府大阪市、代表取締役社長:小倉貞彦)のブースで展示し、サンプルワークを開始します。

CNF添加一方向CFRPプリプレグ

​図CNFを添加した一方向CFRPプリプレグ​

1.CNF添加CFRPプリプレグについて

当社は、かねてよりCFRPとCNFの複合化を学校法人同志社 同志社大学 大窪研究室と共同で研究しており、ハンドレイアップ工法*3にて作製した平織CFRP積層板を用いて、特性データを蓄積して参りました。しかし、多くのCFRP製品がプリプレグを使用した生産方式であるため、最終製品での評価や実用化には至っていませんでした。そこで、実用化を加速させるために、顧客からの要望が多かったCNF添加一方向CFRP*4プリプレグを試作し、製造条件を確立させました。

開発したプリプレグの主な仕様を下表に示します。製造にあたっては、まずCNFをエポキシ樹脂に均一分散させたものを準備し、それをプリプレグ製造メーカーでプリプレグ化します。

なお、当社は、NEDOの助成事業「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」*5に参画しており、CNFの応用先の1つとしてCFRPの実用化にも注力しています。

プリプレグ仕様

2.CNF添加CFRPの特性

CNF乾燥粉末を、エポキシ樹脂に少量添加し炭素繊維と複合化することで、CFRPの曲げ強度や衝撃強度、疲労寿命、振動減衰性、界面せん断強度が向上します。

 

①曲げ強度の向上

曲げ強度試験を行った結果、CNF添加一方向CFRPでは未添加CFRPよりも約20%、CNF添加平織CFRPでは未添加CFRPよりも約13%、曲げ強度が向上しました。これによりCFRPプリプレグの積層数を減らすことができるため、CFRP製品の軽量化が期待できます。

②衝撃強度の向上

CNF添加一方向CFRPのアイゾット衝撃試験*7を行った結果、未添加CFRPよりも衝撃強度が約20%向上しました。CFRPは大きな衝撃が加わるような部位に使用されることが多いため、衝撃強度は重要なパラメーターになります。

③疲労寿命の向上

静的引張試験で破断したときの負荷を100%として、その75%の繰り返し負荷を加える条件で、CNF添加平織CFRPの引張疲労寿命を測定した結果、未添加CFRPよりも疲労寿命が約19倍向上しました。CFRPは繰り返し負荷が加わる部位にも使用されるため、製品の耐久性向上が期待できます。

④振動減衰性の向上

ひずみゲージを用いた振動試験で、CNF添加平織CFRPの振動減衰率を算出した結果、未添加CFRPよりも振動減衰率が約17%向上しました。CFRPは金属よりも優れた振動減衰性があるとされていますが、CNFの添加でさらに向上できます。

⑤界面せん断強度の向上

炭素繊維とCNF添加エポキシ樹脂の界面せん断強度を、マイクロドロップレット法*8で測定した結果、未添加エポキシ樹脂よりも強度が約45%向上しました。炭素繊維間の樹脂中に入り込んだ微細なCNFが、樹脂と炭素繊維をつなぎ止める働きをすることで、界面せん断強度が向上したと考えます。

3.今後の予定

当社は、CFRPの疲労寿命向上や振動減衰が求められているスポーツ用品など、高付加価値用途向け開発を進めるためのサンプルワークを開始し、2027年をめどに高付加価値製品として実用化を目指します。

なお、「ウォータージェット法」で製造したCNFを乾燥化することで、熱可塑性、熱硬化性などのさまざまな樹脂体に適用が可能で、応用範囲が広く優位性があります。今後、これらの特長を生かしてCFRPや光学用途など、比較的高価なCNFでも高付加価値なビジネスとして展開していきます。

4.用語・補足

*1 ナノファイバー

繊維を直径 100 nm以下、長さ 数µmのサイズへ微細化したもの。

*2 プリプレグ

炭素繊維に樹脂を半硬化状態で含浸させたシート状のもの(中間材料)であり、シート同士を貼り合わせて、積層させることで容易に成形することができます。

*3 ハンドレイアップ工法

人手によって樹脂を強化基材に含浸させ、脱泡しながら所定の厚さまで積層する成形法です。

*4 CNF添加一方向CFRP

一方向積層は向きにより、CFRPの性能が変わります。例えば、水平方向に材料を向けると、繊維の特性が大きく出ます。一方、垂直方向には、樹脂の特性がよく出ます。

*5 「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」

https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101344.html

*6 BFDP

BiNFi-sドライパウダー。BiNFi-sを当社独自の乾燥方法にて、凝集を抑えて乾燥させたパウダーで、樹脂や溶媒などに再分散させて使用できます。

*7 アイゾット衝撃試験

物体に高速で負荷を加えたときの抵抗を測定する試験です。

*8 マイクロドロップレット法

繊維に液体樹脂を垂らし、硬化させてマイクロドロップレット(樹脂球)を形成します。樹脂球の引抜試験を行い、引抜荷重から界面せん断強度を算出することができます。

(ご参考)

NEDOとの共同リリースはこちら

 

 


―本件に関するお問い合わせ先―

■株式会社スギノマシン■

経営企画本部 新規開発部 開発プロジェクトグループ

TEL:(076)477-2572