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2025.07.04
最終更新日: 2025.09.25
  • 技術コラム

【技術コラム】金型の寿命を延ばす方法とは?【キャビテーションウォータージェットピーニング|CWJP】

高い寸法精度を求められる金型は、何度も繰り返して使ううちに寿命を迎えてしまいます。寿命となる要因として、変形・摩耗・割れやクラック・表面劣化などの発生があります。特に金型の割れやクラックなどの発生は大きな要因です。
本記事では、そのうちクラックによる短寿命化に対して、水のみを使用した表面処理技術「キャビテーションウォータージェットピーニング(CWJP)」で、金型寿命が延びた事例をご紹介します。

金型寿命と応力の関係

多くの劣化要因には、材料表面に発生する引張残留応力(材料を引き裂く方向の力)が関与しています。

熱処理や機械加工などの工程により、金型部品表層には引張残留応力が蓄積されます。金型を繰り返し使用することで、材料に疲労が蓄積し、微細な亀裂(マイクロクラック)が 発生します。

引張残留応力が存在すると、これらのマイクロクラックが成長・進展しやすくなり、最終的に破損や変形を引き起こす一因となります。

一方で、材料表面に圧縮残留応力(材料を内向きに押す力)を付与することで、亀裂の進展を抑制することができます。

このため、金型の耐久性・寿命を向上させるうえで、表層に適切な圧縮残留応力を付与することは極めて重要です。

圧縮応力を付与するための表面処理方法

現在、製造現場で採用されている、圧縮応力を付与する代表的な表面処理方法を4つご紹介します。

金型への表面処理工法

表面処理技術 特長 応力付与
深さ
表面
粗さ
角部
変形
内径
処理
環境
配慮
処理
時間
金型への
実績例
ショットピーニング 投射されたメディア(球)によって圧縮応力を表層に付与 △ △ △ △ △ ○ ○
超音波ピーニング 超音波振動による工具の高速打撃によって応力付与が可能 △ △ △ ○ ○ △ △
レーザーピーニング レーザーの衝撃波により深い層まで応力付与が可能 ○ ○ △ △ △ △ ○
CWJP (キャビテーションウォータージェットピーニング) 高圧水を噴出させた際に発生する気泡が崩壊する際のGPa級の衝撃力により圧縮応力を付与 ○ ○ ○ ○ ○ △ ○

※当社調べ

 

CWJPのメリット

金型寿命向上におけるキャビテーションウォータージェットピーニング(CWJP)の主なメリットは、大きく分けて以下の2つがあります。

(1)金型エッジ部の変形が極めて少ない

金型にショットピーニングを処理した場合、メディアが当たって角が変形することがあります。

CWJPではショットなどのメディアを使用せず、水だけで処理をするため、エッジ部の変形を数μmに抑えて圧縮応力を付与することが可能です。

変形が抑えられることで、成形品の寸法精度が向上します。

(2)冷却流路の深穴・小径穴の応力腐食割れ対策

深穴・小径穴に他工法でピーニング処理をした場合、処理範囲が限定的になるなど困難なことが多いです。

CWJPはキャビテーション噴流が流れる先にも処理することができるため、金型の内部冷却流路へより強力な圧縮応力を付与できます。

また、ピーニングを行うキャビテーション(気泡)は非常に小さいため、小径穴の処理も可能です。冷却流路内の応力腐食割れが抑制されることで、金型寿命が延長します。

事例|材質・圧縮応力・表面粗さの変化

以下は、キャビテーションウォータージェットピーニング(CWJP)を適用した事例です。
SKD材を中心とした工業用金型において、表面粗さと残留応力がどのように改善されたかをまとめています。

材質

表面粗さ[μm]

圧縮応力[MPa]

未処理

処理後

処理前

処理後

Ra

Rz

Ra

Rz

SKD61 0.968 5.364 0.806 4.848 -408 -877
SKD11 – – – – +50 -913
HAP5R – – – – -393 -861
HAP10 2.73 35.65 2.16 35.95 -855 -948
HAP40 0.237 1.795 0.323 2.207 -338 -1113
HAP72 – – – – -1424 -1573
HPM31 – – – – -566 -946
YXR33 0.319 1.879 0.412 2.486 -578 -1038
MAS-1C – – – – -310 -1451
VANADIS 2.21 36.69 1.89 31.14 -884 -1116
RD50 0.133 1.195 0.149 1.331 -1456 -1836

※表面粗さの変化はわずかで、鏡面仕上げへの影響も最小限です。

※ 圧縮応力は深さ方向にも数十μmにわたって分布しています。

寿命が倍増した実績|ショット数の改善

代表的な金型部品では、処理前後で成形回数(ショット数)が明確に向上しており、CWJPの効果がわかります。

 

材質 部品 処理前 処理後 向上率
SKD11 金型 9,205ショット 12,652ショット 約1.4倍
SKD61 金型 10,000ショット 16,000ショット 1.6倍
粉末ハイス 金型 77,500ショット 212,000ショット 約3倍

 

ショット数比較(粉末ハイス)

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