2025.09.02
最終更新日: 2025.09.11
  • 技術コラム

ウォータージェット洗浄(高圧狙い撃ち洗浄)のメリット

部品洗浄は、製品品質を左右する重要な工程です。
スプレーや浸漬、超音波など多様な工法が用いられる中で、深穴や複雑形状、そして年々厳しくなる清浄度要求に十分対応できないケースも増えています。
こうした課題の解決方法の一つに「ウォータージェット洗浄」があります。
今回はウォータージェット洗浄のメリットについて詳しく解説します。

1. ウォータージェット洗浄とは?

ウォータージェット洗浄は、超高圧の水流をノズルから噴射し、対象箇所をピンポイントで洗浄する工法です。
従来の低圧洗浄では除去が難しい深穴や交差穴に対しても確実な洗浄が可能であり、安定した品質を短サイクルで実現できます。

ウォータージェット洗浄の特長

ウォータージェット洗浄は 以下の特長から、「高精度」「高効率」「高信頼性」 を兼ね備えた洗浄工法として、多様な部品洗浄ニーズに応えます。

特長1:狙い撃ち洗浄で確実な洗浄

・ ノズルをCNCで正確に位置決めし、洗浄対象をピンポイントで狙い撃ち
・ 残りやすい止まり穴・深穴・交差穴の切粉もウォータージェットの威力で確実に除去

特長2:短時間で異物を除去

・ ウォータージェットは流速が速く、切粉や異物を一瞬で除去
・ 生産ラインのタクトに対応、工程のボトルネックにならない

特長3:安定した品質保証

・ 狙い撃ち方式では、ノズルを穴に正確に合わせるため安定した清浄度を確保
・ 固定ノズルのシャワー方式のように「斜めに当たって穴底まで届かない」問題を解消
・ 非接触方式のためワークを傷つけず、チッピングのような突発不良も回避。

特長4:多品種への柔軟対応

・ CNC制御によるノズル位置決めと、水の柔軟性により、形状に依存しにくい
・ 治具変更やプログラム修正のみで、多品種生産ラインや機種変更にも容易に適応し、長期的に設備を使い続けられる

ウォータージェット洗浄の種類

■ 気中洗浄

気中洗浄は、高圧水を気中で噴射し、その直進性衝撃力を利用して切粉・油分の洗浄とバリ取りを短時間で同時に行う洗浄方法です。

◯ 特長

  • 圧倒的な切粉除去力
    ウォータージェットの高速流速により、穴底や奥深い部分の切粉を瞬時に除去
    低圧洗浄では切粉や滞留水が抵抗となり届かない場合でも、ウォータージェットなら確実に異物を排出
    特に多数のタップ穴や止まり穴の切粉・油分除去で効果を発揮
  • 持続する衝撃力と有効範囲の広さ
    ウォータージェットは噴射距離が離れても衝撃力が減衰しにくく、深穴や交差穴など、ツールが届きにくい場所のバリ除去に有効
    さらに、微細な高低差や凹凸、寸法誤差があっても、均一に作用するため、複雑形状の部品にも安定的に適応可能

  • 非接触による安定稼働
    工具のような摩耗やチッピングによる突発的な不良が発生せず、品質を安定して維持
    そのためインライン化や長時間の連続稼働に適しており、多数の実績に裏付けられた信頼性を持つ


■ 高圧水中洗浄(U-Jet)

高圧水中洗浄とは、水中噴射で生じるキャビテーション効果ウォータージェットの衝突力を併用した洗浄方法です。

◯ 特長

  • キャビテーション効果
    水中噴射によって発生するキャビテーション気泡が消滅する際のの衝撃圧で、切粉や油分、微細なバリを強力に除去。
    物理的に届きにくい箇所でも効果が及び、従来工法では残りやすい箇所の異物を排出。
  • U-Jet専用ノズル(ホーンノズル)
    独自開発したテーパ形状の専用ノズルでキャビテーションを効率的に発生。
    安定的にキャビテーションの効果を利用した高効率の洗浄を実現。

  • 複雑な内部形状への対応力
    水中では圧力が均等に伝わり、ジェット噴流と渦流の作用で隅々まで洗浄可能。
    作動油回路や冷却用ウォータジャケットのような入り組んだ穴や複雑な内部構造まで徹底洗浄。

2.他の洗浄方法との比較

部品洗浄にはスプレー・シャワー・浸漬・超音波など多様な工法があり、それぞれに得意分野があります。
その中でウォータージェット洗浄は深穴・止まり穴・複雑形状の切粉除去バリ取り工程の集約厳格な清浄度の確保といった、他工法では難しい要求にも対応できる特長を備えています。
以下に主要な洗浄方法の特長を比較しました。

 

項目 ウォータージェット
(気中洗浄)
ウォータージェット
(水中洗浄)
スプレー シャワー 浸漬 超音波
切粉・油分除去
深穴・止まり穴も瞬時に除去

複雑な内部構造まで対応
 △
表面中心
 △
表面中心

液浸透に依存

微細部に強い
バリ取り
ツールが届きにくい深穴や交差穴のバリも対応

微細バリの除去に有効

限定的
×
不可
×
不可

条件次第
清浄度レベル
バルブボディやEV部品など高清浄度要求に対応

油回路やウォータージャケットまで高清浄度洗浄

部分的
 △
表面中心

液の劣化に依存

高精度だが条件依存
複雑形状
狙い撃ち洗浄で洗浄死角が発生しづらい

ジェット噴流と渦流の作用で隅々まで洗浄

ノズル配置依存
 △
表面中心

全体をカバー
 ○
微細部に有効
品質安定性
高圧水をピンポイント狙い撃ち洗浄

水中では圧力が均等に伝わる

ノズル条件に依存

ムラ発生あり

液管理に依存

周波数・条件依存
処理速度
高圧水で瞬時に除去
インラインに対応

高精度だが洗浄槽の水の処理時間が必要

中速、ライン適応可

広範囲一括処理

浸漬時間が必要

条件調整に依存

 

3.ウォータージェット洗浄の導入メリット

ウォータージェットの強みは、単に「高圧で洗える」だけではありません。生産現場の課題解決につながる代表的な導入メリットをご紹介します。

品質保証の安心感

・ Tier1や完成車メーカーで求められる清浄度レベルへ対応
・ 確実性のある深穴・止まり穴・交差穴の異物除去で不良流出リスクの低減

工程集約と省人化

・洗浄・バリ取りをまとめて実施、乾燥機能も1台に搭載可能
・複数設備の削減による工数削減と省スペース化

自動化ラインとの親和性

・安定したタクトでロボットや搬送装置との連携が容易
・中間洗浄から最終洗浄まで柔軟に組み込める高い適応力
・突発的な不良が発生しにくい品質の安定性

変化に強く、長く使える汎用性

・治具・プログラムの変更だけで多品種対応
・NC制御と水の非接触特性でワークを選ばない汎用性
・オーバーホールとワーク転用で長期間稼働可能な製品寿命
・長期利用による投資回収性の高さ

4.採用事例

気中洗浄

クランクシャフト

目的:油穴の切粉・異物除去
圧力:35MPa
結果:清浄度300μm以下達成

( 詳細準備中 )

水中洗浄

冷媒マニホールド

目的:冷媒回路内のコンタミ除去
圧力:20MPa(水中)
結果:コンタミ質量0.02mg達成

( 詳細準備中 )

洗浄+バリ取り

ABSハウジング

目的:清浄度の達成
結果:油路の清浄度300μm以下

( 詳細準備中 )

5.最適な洗浄方法を見つけるために

ウォータージェット洗浄は、従来工法では難しかった深穴・複雑形状の切粉除去微細バリの処理厳格な清浄度確保を同時に実現します。
さらに乾燥や一部のバリ取り工程を統合できるため、工程集約・自動化・品質安定の観点からも導入メリットは大きく、インラインで自動車部品から建機・油圧まで幅広い分野で採用されてきた実績があります。

スギノマシンでは、最高245MPaの高圧水による洗浄・バリ取りが可能な洗浄機をラインナップしています。
また、最適な洗浄方法を見つけるために、それぞれの洗浄機でテストが可能な環境をご用意しております。
詳しくはリンク先の案内をご確認いただき、まずはお気軽にご相談ください。

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