2024.07.08
最終更新日: 2024.10.03
  • 技術コラム

ウォータージェットバリ取り技術

複雑形状に発生するバリや、穴の奥に発生するバリは手作業で取るには難易度が高く、時間のかかる仕事です。働き手不足の昨今においてはバリ取りの自動化は急務ですが、上記の様なバリは機械加工による自動化においても最も難しく、未だに製造現場の困り事の筆頭となっています。ウォータージェットは噴射距離が離れても衝撃力が減衰しにくいため、深穴や交差穴など、刃物が届きにくい場所に発生したバリの除去に適しています。デバラボでは、他工法では解決困難な課題を中心にウォータージェットバリ取り技術を洗練し、皆様と課題解決に挑戦します。

複雑形状のバリを高圧水で破壊する

ウォータージェットの場合、ノズルから噴出した水の広がりによって、バリ取りにおける有効直径が約3mm程あるため、機械加工に比べてプログラムが簡略化できるメリットがあります。また微細な高低差や凹凸、寸法誤差があっても、有効範囲内に一様に高圧水の効果が発生するため、複雑な形状のバリ取りに適しています。

ウォータージェットバリ取りとは

ウォータージェットの力

ウォータージェットとは、水を昇圧し、ノズルから噴射することで発生する高速水噴流のことを言います。噴射直後の水は連続的に流れますが、ノズルから離れるにつれて徐々に連続流内に破断が現れ始め、これが液滴・液塊となり、バリに対して断続的な衝撃を加えるようになります。また、高圧水がバリに衝突した際の圧力変動やジェット噴流内の乱れによってキャビテーションが発生、そのキャビテーションによって生じる衝撃がバリを除去します。

噴流メカニズム

NC制御によるバリの狙い撃ち

バリを除去するには、高圧水を当てる位置、角度、時間、圧力、流量、ノズルから被削材までの距離を最適化する必要があります。そのため、ウォータージェットバリ取りには条件を最適化するための駆動装置と、条件を再現するための制御装置が必要になります。また、複数のノズルやツールを搭載できるため、バリ取りと洗浄工程を集約できる事は他工法に対して優位な点です。

ウォータージェットバリ取りの特長

ウォータージェットによるバリ取りは、高圧水ならではの様々な特長があります。エッジ品質やコストなど、あらゆる面におけるウォータージェットの特長を紹介します。

噴射距離が離れても衝撃力が減衰しにくい

ウォータージェットによるバリ取りの一番の特長は、ノズルからの噴射距離が離れても衝撃力が減衰しにくい性質です。一般的に深穴や交差穴に発生したバリはバリ取りツールが届かない、もしくは届きにくいため、自動化・機械化するうえでのひとつのハードルになることがあります。ウォータージェットはそういったバリ取りツールでは届きにくい場所であっても容易にアプローチすることが可能です。また、高低差のあるワークであっても高低差に合わせてプログラムを作る必要はないため、簡単なプログラムで安定したバリ取りを行うことができます。

対象ワークに合わせた条件で母材を傷つけずバリだけを除去

ウォータージェットバリ取りにおけるバリの取れ具合に影響を与えるパラメータは、高圧水を当てる位置、角度、時間、圧力、流量、ノズルから被削材までの距離などがあります。対象ワークの材料特性に応じて条件を調整することで母材へのダメージを抑え、バリのみを除去することが可能になります。

ウォータージェットバリ取りでは、工作図面に記載されている「C***」や「R***」のように、意図した形状を成形することはできませんが、バリだけを狙って除去するため、エッジを残してバリ取りを行いたいときに最適です。

バリ取りと洗浄を工程集約

ウォータージェットではバリ取りと洗浄を同時に行うことが可能です。前工程の切削で発生した切粉や切削油の除去だけでなく、バリ取り中に発生する微細な切粉もまとめて洗い流します。工程集約することで省スペース化、リードタイムの短縮にもつながります。

流体の特性を活かした安定したバリ取り

ロータリーバーやブラシ、砥石などのように、直接被削材を削ってバリ取りを行う方法の場合、刃のチッピング、目詰まりなどによってバリ取り後のエッジ品質が変わってきます。ウォータージェットバリ取りは流体による加工であり、直接金属同士が接触しあう加工ではないため、チッピングや目詰まりといった要素の影響を受けにくく、バリ取り品質の安定化や、工具の管理コストを抑えることが可能です。

ウォータージェットバリ取りでできること

ノズルチェンジによる高い汎用性で様々なバリに対応

ウォータージェットバリ取り機には、様々な種類のノズルが備わっているため、ワークが多品種であっても1台で対応することが可能です。また、バリ取りが必要ないワークに対しては高圧洗浄機として使用することもできるためバリ取り以外の用途としても使用できる汎用性の高い機械です。

ワークの上部からバリにアプローチ

直射ノズル

直射ノズルはワークに対して上部からバリにアプローチします。ワークの縁に発生したバリやワーク上部の穴のバリ取り、洗浄に最適です。

穴の内部から交差穴のバリ取り

ランスノズル

ランスノズルは穴の内側にノズルを挿入し、穴の内側をバリ取り、洗浄することができます。深い位置にある交差穴に発生したバリのように、手作業でも機械でも難しいバリ取りを容易に行うことができます。

ワークの側面からバリにアプローチ

L型ノズル

L型ノズルはワークに対して側面から水を噴射できるノズルです。ワークの向きを変えることが難しい大型ワークに対してあらゆる面からバリを狙い撃ちできます。

広範囲に発生したバリを効率よく除去

マルチノズル

マルチノズルは複数のノズルから水を噴射できるため、広範囲に発生したバリを短時間で除去(洗浄)することが可能です。複雑な形状をしたワークや広範囲にバリが発生しているワークにおいて効率よくバリ取りができます。

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