地域創生、アイデアの源、前に踏み出す力 /「お菓子づくり×デザイン×ものづくり」 異分野の3人が白熱した議論交わす
当社がネーミングライツ(命名権)を取得している富山大学 スギノマシンラウンジ(学生会館ラウンジ)で2026年7月2日、豪華ゲストお二人と当社の杉野岳社長がものづくりや挑戦などについて意見を交わすトークイベント「TALK with GAKU」を開催し、おかげさまで、会場とオンラインで多くの方にご参加いただき、大盛況のうちに無事終了しました。
ゲストにお招きしたのは、日本を代表するパティシエでモンサンクレール オーナーシェフの辻口 博啓さん(石川県七尾市出身)と、株式会社GKデザイン機構 代表取締役社長 CEOで、日本のデザイン界をけん引する田中 一雄さんです。
冒頭で登壇者それぞれが自身の歩みや取り組んできた事業について紹介。後半のトークセッションは「お菓子づくり×デザイン×ものづくり トップランナーによる地域創生『融合(フュージョン)』」をテーマに、地方創生や新しいものをつくる時のアイデアの源、前に踏み出す原動力について熱く語り合いました。
トークセッションではいただいた質問を中心に、フリートークも交えながら繰り広げました。
【開催概要】
2026年7月2日(木)
富山大学 スギノマシンラウンジ(学生会館ラウンジ)
主催:株式会社スギノマシン 協力:国立大学法人 富山大学
■登壇者紹介

辻口 博啓 さん
モンサンクレール オーナーシェフ
石川県七尾市出身。
数々の国際コンクールで受賞歴を持つ日本を代表するパティシエ、ショコラティエ。

田中 一雄 さん
(株)GKデザイン機構 代表取締役社長 CEO
富山市電「PORTRAM」のデザインも手掛けた、日本のデザインを牽引する「GKデザイングループ」の代表。デザインマネジメントの専門家。

杉野 岳 さん
(株)スギノマシン 代表取締役社長
富山県に本社を持ち、今年で創業90周年を迎えた「超技術」で世の中に貢献し続けるものづくり企業の経営者。
【 以下、トークセッション 】
(トークセッション内は敬称略)
■富山の地方創生に必要なことは?
辻口さん:忘れられない田んぼのあぜ道の思い出
田中さん:デザインは愛。地方創生にも愛が必要
杉野さん:キーワードは必然性
A辻口:
富山というと、今お寿司を押し出していて、お寿司のすごくおいしい県だというイメージを持っています。食はたくさんの人やビジネスを呼び込みます。食とアートが結びつくことでツーリズムも生まれます。
私にとっては、子どもの頃、何気なく見ていた田んぼや水田の文化も次世代に残したい大切な風景です。僕は東京にかれこれ40年ぐらい住んでいて、ふと頭の中に思い浮かぶのは、子どもの頃に七尾の田んぼのあぜ道で、赤とんぼを追いかけ回したり、田んぼの中でヤゴの幼虫を探したりした思い出です。
富山にもそうした風景が残っています。富山をどういうふうな街にするか考えるには、歴史感をしっかり持つということ。富山の歴史、食文化がどう積み重ねられてきたのか、残すためにどうすべきかを考えていかないといけない。そうしたプロセスが地域をよくすることにつながると感じています。
A田中:
地域創生のこの質問されたのは学生さんなのですね。行政の方かと思っていました(笑う)。今の学生さんは真面目に考えていますね。
私が代表を務めるGKグループは、もともと東京藝術大学の学生グループが起源で誕生しました。その志を深く理解してくださった故小池岩太郎先生が、一番テーマにしていたのが「デザインは愛です」という言葉です。
これは人と社会を愛すること、人と社会に良いことをすること、という意味で捉えていいと思うのですが、地方創生は小池先生の言葉に通じるところがあると思います。市民の皆さんが自分の街を誇りに思い、愛着を持つ。地域愛がとても大事だと思います。
じゃあ愛がどうやってつくられるのかというと、おいしい物が食べられる、素敵な風景があるとか、そういうことではないかと思います。
手前味噌で言うと、私はデザインとは、新しい価値の社会実装だと思っています。どういう意味かというと、新しいものつくろうと言う時、面白がる人もいるけど、嫌がる人もいる。けれど、実際にデザインされた物が出来上がると、それまでと違うことをいわれることがあるんですね。
富山市を走る路面電車のライトレールは、当社がデザインを手掛けています。(低騒音化や停留所のバリアフリー化をし、高いデザイン性を持つ次世代型の路面電車として2006年4月に)日本全国に先駆けて導入されました。
最近は「宇都宮ライトレール」(2023年8月開業)も当社の事例です。
実は、最初は「交通渋滞の原因になる」などの否定的な意見もあったんです。
ところが電車のデザインが公表されたら、そうした意見が聞こえなくなりました。「かっこいいからいいんじゃないか」みたいなね。
でも今、事業は成功していますし、交通渋滞は起きていません。宇都宮といえば、餃子がありますが、今、ライトレールが市民さんの誇りになっていると思います。
自分が愛せる場や、その活動がやはり地域創生の基本じゃないかな。その時に、デザインを活用することも一つだと考えます。何よりも地域の人から愛されるものをつくることだと思います。
A杉野:
お二人の話と重なるなと思うんですが、私は先ほど(各登壇者の事業紹介で)当社の経営の話の際に申し上げた「必然性」がキーワードだと思うんですね。例えば、何かを新しく富山でする時や始める時に、「なぜ、それをそこでやるんですか」「なぜ、それをそこでやる必要があるんですか」と問う。「儲かるから」「お客様が来そうだから」「世の中がみんなそうやっているから」ということだったら、富山でそれをやる必要は全くないんです。他のところでもいい。
「なぜ富山でするんですか」というところは、突き詰めないといけない。それは歴史だったり、住民の方の思いだったり、いろいろなものがありますが、とにかくそこに必然性がないことは、全く意味はない。
もしかしたら短期的には儲かるかもしれないし、盛り上がるかもしれない。でもそれは多分長続きしない。やはり、真剣に我々、富山の人間が「なぜこれを我々がやる必要があるんだろう」「他ではできないんだろうか」と突き詰めて考えるということが一つ重要だと思っています。
その次に必要なのは、デザインにも関わるんですが、アイコンやシンボル。どういうことかと言うと、関わる人のベクトル、見据える方向性を揃えるということです。
例えば、辻口さんの自由が丘スイーツは、別に狙ったわけじゃないと思うんです。でも今は自由が丘のアイコン。アイコンとしてのスイーツがあるから、自由が丘がだんだんスイーツの名店が建ち並ぶおいしいおしゃれな街になった。そこは、自由が丘の強みだと思います。
A辻口:スギノマシンのお菓子を切る機械(ウォータージェットカッタ)は、どういう発想で生まれたんですか?
A杉野:
当社は、世の中に必要とされることをして、「当社のコア技術を使える領域なら、どこでもいきます」、という考え方なのです。そこは他社とは大きく違うと自負しています。多くの会社は、自社製の機械はこういうところに納品するもの、と決めちゃっていると思うんですが、当社はそれを決めないで、どの業種にもカスタマイズして、当社の技術を提供します。例えば、当社のウォータージェットカッタは、主に工業製品を切っていましたが、これは食品にも使えると気付いた。気付いたからには、そこに売りに行く。そして、お客様の方からもニーズもいただけるようになった。
Q司会:そういう意味では、杉野さんの技術、田中さんのデザイン力、辻口さんのお菓子づくりをコラボレーションして、3人でおみやげをつくれたら面白いですよね。

A辻口:
ぜひやらせてください。そういうふうに地方創生が回っていくと、また面白いと思います。杉野さん、田中さんの考えや信念に共鳴しますし、デザインは一目で人の心を動かす力がある。
先程控室で、杉野さんにお話を聞いた装置の中で、物や食品を細かく砕く技術(微粒化装置「スターバースト」)って、食材を丸ごと使えて、栄養素も多く取り込めて、食品を全て使い切れるので、SDGsの観点も含めてすごいなと思いました。
A田中:
デザインをしていて、大事なことに「リフレーミング」という考えがあります。物事を見る枠組みを変えて、別の枠組みで見直す。機械ではなくて、食べ物を切ってもいいじゃないか。そうした既存の価値と違うところに転換するところから、新しいものが生まれる。まさしく歴史をつくってきたデザインは、全部リフレーミングだと思うんです。
A杉野:
リフレーミングは、必然を突き詰めた結果だと思います。結局、自分たちが持っている強みは何なのか、自分たちがやるべきことは何なのか考えた時に、人間や会社は自分の枠を決めがちです。でもよくよく要素を噛み砕いて分析していったら、そんな枠に捕らわれなくていいと気付く。そこで新しい分野や商品に進出できることがある。自分の強みをひたすら突き詰めて、そこから次のステップに進む。それは本当にリフレーミングそのものです。
■デザインの本質とは
杉野さん:デザインは見てくれではないと気付いた/品質は細部に宿る
辻口さん:こだわりがブランド価値創出につながり、そこに人が集う
田中さん:デザインとブランド形成に相乗効果
A杉野:
スギノマシンでは今、GKデザインにもご協力いただき、ブランディングにデザインを取り入れています。私と田中さんとの出会いはもう20年以上前です。
実はですね、辻口さんが言われたように、機械メーカーにデザインはいらないという認識は根強いものがあります。でも私は機械メーカーでもデザインを価値に変えることができるのではないかと、田中さんと議論を続けてきました。失礼な質問もたくさんしたと思いますが、最終的に腹落ちしたのは、デザインによって成し得るユーザーフレンドリー(ユーザーにとって使いやすいこと)とか、ユニバーサルデザイン(すべての人が使いやすく設計されたデザイン)とか、結局デザインは見てくれではないということ。機械のポテンシャルを最大限引き出すためのツールだと気付きました。
もう一つは、当社のアイコン「スギノアイ」を使うことによって、社内のベクトルを揃え、社外に対してメッセージを送ることができることです。スギノマシンはこういう会社ですよ、といちいち言わなくても、アイコンや機械のデザインからわかってもらえる。デザインを通して、社内外に我々のありたい姿、あるべき姿を表明することができます。
この二つのポイントに気付けたのは、田中さんのおかげなんですね。
A田中:
もちろん見てくれも大事ですけどね。でもそれ以上に、使い勝手や機能性など、見てくれ以外にデザインにはさまざまな価値があります。ファッションデザインや辻口さんのスイーツのブランドも良い事例だと思います。機能性とその機能性の高さのブランディングという事例もあります。例えば、ブランドがいいものだと、社員の皆さんが「うちっていい会社だよね」と思えることもあります。ごく小さな部品を製造するある会社で、誰も商品を衝動買いすることはなくても、かっこよくデザインをする。そうすると、社員が「品質が良さそう」「うちっていい物を作ってるよね」と思える。直接的には性能とは関係ないんだけど、それはまさに企業ブランドになります。
辻口:
私もそう思います。とことんこだわることを示していかないと、そういうスタッフって育たないし、集まらない。うちで働いてみると、手間暇かけて、「どうしてこんなことまでやるんだろう」と思う人もいるかもしれない。でもそれをやることによって、こだわりを持った人が集まってくる。一手間二手間かけることによって、会社の方向性やブランド価値、ここで働いてる意味、そういったものを社員自身が見出して、育っていく。
何かをつくるということ、デザインとは、そうしたこだわりの部分ではないかと感じました。
杉野:
製造業でも同じような視点で、「品質は細部に宿る」という言葉があります。見えない所とか、そこまでやらなくてもいいんじゃないかという所まで突き詰めることによって、全部が良くなる。逆に言うと、ある場所で手を抜くと、全体の性能が落ちる。見えない所で手を抜くような人は、他も手を抜く。「まぁいいか」と思ったら負けなんです。これでいいと思ったところからさらに一歩進めることができる会社が勝つんですね。
A田中:
こだわりですよね。辻口さんのケーキは、高くても喜んで買われるじゃないですか。
A辻口:
そんなに高くないですよ(笑う)。そんなことを言われると高いというイメージが付いちゃいますよ。適正な価格です。
A杉野:
必要なら高い価格でも買うわけですよね。だから、値段って絶対値ではない。得られる価値に対して払われているわけですから、単純に高い安いってことではない。我々がニッチな企業として生き残っていられるのも、価値を示せているからだと思っています。
A辻口:
僕は、ショコラの分野で、ペルーにカカオ農園を取得し、カカオを育て、タブレットショコラになるまでを一貫して手掛ける「FARM to BAR」という取り組みもしています。
チョコレートは発酵食品で、土から手をかけてやっていると、その発酵のさせ方次第で本当に美味しいチョコレートができるんです。一から、自分でやることによって、唯一無二の味わいを引き出す。それに対して、どういう価値を皆さんが見出すかっていうのは、それぞれだと思いますが、自分たちにしかできない付加価値を出すということと、デザインは共通していると思います。
A田中:
原材料から作り方から考えていく、というのは、実はファッションデザイナーの三宅一生さんがそうです。三宅一生さんの考え方は、我々工業デザイナーと近くて、今ある布でどういう形のものを作るか、ではなくて、布自体から考える。加工の仕方から、繊維の作り方から考えている。ある面、ただのこだわりじゃなくて、本質から考えていくようなところが、新しい価値を生んでくる。
■アイデアの源は?
辻口さん: 世界を知ること。なぜ評価されたか理解すること
田中さん:棚卸しできる棚をどれだけ持っているかが大切
杉野さん:自分たちが提供できるシーズを徹底的に考える
A杉野:
自分たちの持っているシーズが何なのか、徹底的に考えることです。他から持ってきたものを使っても、うまくはいかない。当社にしかできないことは何なのか、当社がやるべきことは何なのか、それを要素に分けて考えるということです。要素は組み合わせ次第で、無限に違うものにもできます。
もう一つは、これは私の持論ですが、仕事っていうのは、世の中に必要とされているから存在できるものであり、では我が社が必要と認められているのはなぜなのか、提供できることは何なのか、しっかり考えるということだと思うんですね。独りよがりな物を作っても、商売にはならない。会社にとっては売れるか売れないかというのが非常に重要で、売れるということは、必要とされているということ。だから、単に最先端な技術が全て良いわけではないということです。
A田中:
デザインも全く同じです。
新しいものを発想するには、棚卸しできる棚をどれだけ持っているかが大切。新しいことって、天から降ってくることもあるかもしれないですが、なかなかそうは降ってこない。
ものを発想する、あるいは美しい物をつくることにしても、どれだけ美しい物を見たか、新しい機能を考える時にどれだけの引き出しが頭の中にあるか。それをいつも考えていると、ある瞬間にシナプスがつながるということだと思います。
AIの時代に突入する今、人間の目、目利き力がますます大事になってきます。
AIは既存のものをものすごい速いスピードでまとめて、組み替える。だから、ピカソのような絵を描いたり、村上春樹の「ような」小説を描いたりすることはできるかもしれないけど、AIの新しい作家はまだ出てこない。
でも、次のAGI(汎用人工知能)などの世界に向かっていったら怖い。私たちは失業するかもしれないと思っています。
目利き力を養うには、発想することをたくさん繰り返していることによって、頭の中にどれだけ多くの棚を持っているか、どれだけの経験をしているかが大きい。
A杉野:
確かに人間にはひらめき的なものがあるが、ひらめきはひらめきが単体で存在してるわけではない。絶対にそこにはベースとなる経験とか思索とかがあります。
それがないのに、いきなり、宝くじ当たるようなことはない。だから何の努力もなしに一発逆転ホームランを狙っていたら絶対に無理です。一発逆転ホームランを打つためにはそこまでの積み重ねが大事なんです。
A辻口:
お二人とほとんど同じ意見ですね。
僕は、とにかく世界中の食を見ています。フランスはガストロノミー(美食学)の国であり、食文化において世界を代表する素晴らしい国だと思っています。
ただ、今、世界一のレストランがどこにあるかご存じですか。
世界中の食のジャーナリストが選ぶナンバーワンは、フランスでもイタリアでも、スペインでもありません。ペルーにあるんです。
世界のレストラン関係者が注目する「世界のベストレストラン50」というランキングで「Maido(マイド)」というレストランが2025年に1位に輝きました。日系人シェフが腕を振るっていて、僕も実際に行ってきました。予約はまったく取れない人気店です。
もう「フランスだから」「イタリアだから」という時代ではないんです。今は地球規模で考える時代です。
世界中をリサーチして、「この人は何をやっているのか」「どんなプロセスを経てここまで来たのか」を調べることが大事だと思っています。そういうリサーチ力がなければ、アイデアは生まれません。
実際にマイドで食事をしたとき、正直、「これが世界一なのか」と思いました。もちろん、おいしかったですよ。
するとシェフが、「辻口さん、まだ首をかしげていますね」と言うんです。
それから「ペルーで1年暮らした人がこの料理を食べたら、この塩加減がちょうどいいと感じます。でも、日本から来たばかりの人には濃く感じるかもしれません」と話してくれました。その話を聞いて、「確かにその通りだ」と思いました。
そうやって実際に足を運び、自分の目で見ることが大切だと思っています。そして、その中で自分はどう判断するのか。それを繰り返していくんです。
すると、寝る間際にいろいろな構想が浮かんでくる。
僕も18歳の頃、お金がなかった時期から、毎晩寝る前にいろいろなイメージを膨らませ、アイデアを考えていました。コンクールで優勝した人たちの作品写真を枕元に並べ、その作品の良いところを毎日一つでも見つけてから眠るようにしていたんです。
そのうちに気づいたのは、自分の作品には必ず評価する人がいるということです。
作品は作るだけではだめで、「なぜ評価されたのか」という理由まで理解しなければ、自分本位の作品になってしまい、人には伝わりません。
だから、その整合性を考えながら、毎晩眠る前にずっと考え続けていました。
それが、ひらめきを生むヒントになるのではないかと思っています。
だから、一番大切なのは世界を知ることです。そして、気になった場所があれば実際に行ってみることです。
そういう過程を飛ばして、本当に良いアイデアが生まれることはないと僕は思います。
A田中:
「デザインは感性だから分からない」「美的センスはどうやって磨けばいいのですか」と聞かれることがよくあります。私は、どれだけ良いものを見るか、それを自分の体の中に取り込んでいくのか、そういう積み重ねだと思います。
辻口さんのお話を聞いていて、「すごく似ている」と感じました。
A杉野:
もしかすると、お二人とは少し考え方が違うのかもしれないと思い、あえてお聞きしたいことがあります。私は会社を経営する上で、ロジカルシンキングを最重視していて、社員にもそれを求めています。
感覚的だと思われることでも、そこには実は理由や理屈があって、その内容を言語化すべきと思っています。先ほど辻口さんのお話を聞いていて、味覚の世界でも、何が評価されたのかをロジカルに分析しないといけないということなのかなと解釈しました。
味やデザインは、感覚というひとことで片付けられてしまいそうなものですが、評価される理由について分析して、言語化や理屈付けはされるものなのでしょうか?
A辻口:
そういうことの繰り返しなんじゃないですかね。
ロジカルシンキングがなければ、アイデアは見えてこないし、確立もしないと思っています。自己満足の世界だけでは成り立ちません。
そこには時代背景もありますし、落とし所は常に時代とともに進化し、変化していきます。そういうものを見つけられるからこそ、人生は楽しい。逆に「これが完成形だ」と思った瞬間に、人は落ちていくと思う。
だからこそ、それを超えるものを考え続けることが大切です。時代は進化し続けますし、いずれ古くなるものもあります。でもその古さがやがてブランドとして新たな価値を持つこともある。
A田中:
誤解を恐れずに言うと、アートとデザインの違いは、社会とつながっているかどうかだと思っています。
もちろん、アートも社会とはつながっていますが。
一方で、デザイナーにはマーケットがあります。「売れてなんぼ」という側面があるのも事実です。
ただ、既存のマーケットを調査するだけでは、新しい価値は生まれないと思うんです。
米国の実業家で、大衆向け自動車の大量生産方式を確立した、有名なヘンリー・フォードの言葉があります。まだ馬車しかなかった時代に、「もっと遠くへ行くために何がほしいか」と聞かれたら、答えは「もっと速く走る馬」に決まっているでしょう。誰も「自動車がほしい」とは言いません。なぜなら、自動車という乗り物を知らないからです。
つまり、マーケットリサーチには限界があります。
A杉野:
はじめの話にもつながりますが、地域創生においても、一番重要なのは客観視というか、自己満足な評価軸から離れることだと思います。
A辻口:
富山と石川というのは隣り合っていますが、それぞれに特徴があります。
石川と富山が対立するということではなく、むしろ良い関係性の中で高め合っていくことが大事だと思うんです。
僕がイメージしているのは、スペイン・バスク地方の中心都市、サン・セバスチャン(美食の街)とビルバオ(芸術・観光の街)のような関係です。お互いが高め合い、介入し合いながらも、仲が良い。
富山は富山の独自性をしっかりと見つめ直し、それをマーケティングしていくことが重要です。
それぞれが立ち位置を明確にすることで、面白い流れも生まれてくると思いますし、お互いに力を合わせることで、可能性が生まれるのではないでしょうか。
■挑戦する者たちへ ~大切にしてほしい視点~
杉野さん:自分の使命は何なのか。無駄な経験は一つもない
辻口さん: まず行動に移すこと
田中さん:「“自分”を見つける」ことが一番大事
A辻口:
今日ここに来る途中で、「死ぬ間際に一番後悔することナンバーワン」というのをSNSで目にしたんです。多くの人が「なぜ自分はチャレンジしなかったんだろう」と思うらしいんです。
だから「少年よ、大志を抱け」というような言葉がありますよね。その“大志”というのは頭の中で考えるだけではなくて、まず行動に移すことだと思っています。
とにかくチャレンジしてみる。そして動く。それがすごく大事なんです。
ちなみに、僕はこれが終わったらベトナムに行きます。
A田中:
自分は本当に何をやりたいのか、もう少し言えば、何が好きなのか。
なんとなく周りに流されることもある。でもその中にいる“本当の自分”は何がしたいのか。
そしてそれを見つけたら、信念を持って貫いていく。もちろん、いろいろ大変なこともありますし、私自身人生でしんどいことはいろいろありました。それでもめげずに生きていくことだと思います。
「自分を見つける」ということ。そこが一番大事なんじゃないかなと思います。
A杉野:
私からは二つあります。
一つは、自分の使命は何なのかを考える、ということです。人間がこの世に生を受けたからには、何か生きる意味があるはずだと信じたい。
自分の生きる意味は何なのか。それを真剣に考えてみてほしいと思います。そしてそれが見つかったら、それを愚直に全うする。
もう一つは、私はこの世の中に「不必要な経験」や「無駄な経験」は一つもないと思っています。
もし皆さんが何か経験して「無駄だった」と感じたとしたら、それはその経験を生かせなかった自分の責任だと思うんです。
つまり、どんな経験でも必ずプラスに転化できるということです。
大切なのは、経験を無駄にしないことです。どんな経験でも自分で咀嚼(そしゃく)し、自分のものにしてアウトプットに活かしていく。それができるならば、何をやってもいい、というか何でもやってみるべきと思います。
Q司会:
夢を現実にするために必要なものは何でしょうか?
A辻口:
僕はどちらかというと「走りながら考える」タイプ。止まって考えるよりも、まずやってみて、ダメだったらそこを修正していけばいい。ずっと考えているだけだと、ほとんど何もできないと思っています。
最近はコーヒーの事業を立ち上げました。美味しい飲み物、美味しい焼き菓子、美味しいスイーツがあれば人は必ず集まるし、まずは“飲むもの”から変えていくべきだとひらめいたんです。研究を重ねて、「いつかはこの美味しいコーヒーをみんなに飲んでもらう」という思いでやっています。
一緒に働いているのもコーヒーが大好きなメンバーですが、今はなんとかやりくりしている状況です。「いつかちゃんと形にしよう」という気持ちで続けています。
何かをするには、失敗もするかもしれない。でもそのときはまたやり直せばいいし、どう修正するかが大事なんだと思います。
A田中:
繰り返しになりますが、自分は何が本当に好きなのかという“信念”だと思います。
その信念を選んだのであれば、そのために必要なことをやる。やっぱり汗もかかなきゃいけないと思います。
僕は長らく、英語から逃げてきて、50歳の時点ではほとんど英語が話せない状態でした。国際会議で議長を務めるようにもなりましたが、もうバケツ何十杯分かわからないくらい冷や汗をかきながらやってきました。それでも、自分でやりたいと熱意をもってやってきたから続けてこられたのだと思います。
A杉野:
「迷ったらやる」ということだと思います。
それともう一つは、先ほども申し上げたように、自分が何をなすべきかを見つけること。そしてそれを見つけたら、もうやるしかないということです。
ごちゃごちゃ言ってやらない人は、言い訳してるだけですよ。行動しない人に新しいチャンスは絶対来ない。棚からぼた餅は起こらないんです。
Q司会:
ぜひこのお話を聞いて、ご自身の中で発見などあればいいなと思います。夢を持っている皆さんは、ぜひ行動を起こしてほしいと思います。本日は、貴重なお話、ありがとうございました。


