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2025.07.04
最終更新日: 2025.07.03
  • 技術コラム

【技術コラム】金型の寿命を延ばす方法とは?【キャビテーションウォータージェットピーニング|CWJP】

高い寸法精度を求められる金型は、何度も繰り返して使ううちに寿命を迎えてしまいます。寿命となる要因として、変形・摩耗・割れやクラック・表面劣化などの発生があります。特に金型の割れやクラックなどの発生は大きな要因です。
本記事では、そのうちクラックによる短寿命化に対して、水のみを使用した表面処理技術「キャビテーションウォータージェットピーニング(CWJP)」で、金型寿命が延びた事例をご紹介します。

金型寿命と応力の関係

多くの劣化要因には、材料表面に発生する引張残留応力(材料を引き裂く方向の力)が関与しています。

熱処理や機械加工などの工程により、金型部品表層には引張残留応力が蓄積されます。金型を繰り返し使用することで、材料に疲労が蓄積し、微細な亀裂(マイクロクラック)が 発生します。

引張残留応力が存在すると、これらのマイクロクラックが成長・進展しやすくなり、最終的に破損や変形を引き起こす一因となります。

一方で、材料表面に圧縮残留応力(材料を内向きに押す力)を付与することで、亀裂の進展を抑制することができます。

このため、金型の耐久性・寿命を向上させるうえで、表層に適切な圧縮残留応力を付与することは極めて重要です。

圧縮応力を付与するための表面処理方法

現在、製造現場で採用されている、圧縮応力を付与する代表的な表面処理方法を4つご紹介します。

金型への表面処理工法

表面処理技術 特長 応力付与
深さ
表面
粗さ
角部
変形
内径
処理
環境
配慮
処理
時間
金型への
実績例
ショットピーニング 投射されたメディア(球)によって圧縮応力を表層に付与
超音波ピーニング 超音波振動による工具の高速打撃によって応力付与が可能
レーザーピーニング レーザーの衝撃波により深い層まで応力付与が可能
CWJP (キャビテーションウォータージェットピーニング) 高圧水を噴出させた際に発生する気泡が崩壊する際のGPa級の衝撃力により圧縮応力を付与

※当社調べ

 

CWJPのメリット

金型寿命向上におけるキャビテーションウォータージェットピーニング(CWJP)の主なメリットは、大きく分けて以下の2つがあります。

(1)金型エッジ部の変形が極めて少ない

金型にショットピーニングを処理した場合、メディアが当たって角が変形することがあります。

CWJPではショットなどのメディアを使用せず、水だけで処理をするため、エッジ部の変形を数μmに抑えて圧縮応力を付与することが可能です。

変形が抑えられることで、成形品の寸法精度が向上します。

(2)冷却流路の深穴・小径穴の応力腐食割れ対策

深穴・小径穴に他工法でピーニング処理をした場合、処理範囲が限定的になるなど困難なことが多いです。

CWJPはキャビテーション噴流が流れる先にも処理することができるため、金型の内部冷却流路へより強力な圧縮応力を付与できます。

また、ピーニングを行うキャビテーション(気泡)は非常に小さいため、小径穴の処理も可能です。冷却流路内の応力腐食割れが抑制されることで、金型寿命が延長します。

事例|材質・圧縮応力・表面粗さの変化

以下は、キャビテーションウォータージェットピーニング(CWJP)を適用した事例です。
SKD材を中心とした工業用金型において、表面粗さと残留応力がどのように改善されたかをまとめています。

材質

表面粗さ[μm]

圧縮応力[MPa]

未処理

処理後

処理前

処理後

Ra

Rz

Ra

Rz

SKD61 0.968 5.364 0.806 4.848 -408 -877
SKD11 +50 -913
HAP5R -393 -861
HAP10 2.73 35.65 2.16 35.95 -855 -948
HAP40 0.237 1.795 0.323 2.207 -338 -1113
HAP72 -1424 -1573
HPM31 -566 -946
YXR33 0.319 1.879 0.412 2.486 -578 -1038
MAS-1C -310 -1451
VANADIS 2.21 36.69 1.89 31.14 -884 -1116
RD50 0.133 1.195 0.149 1.331 -1456 -1836

※表面粗さの変化はわずかで、鏡面仕上げへの影響も最小限です。

※ 圧縮応力は深さ方向にも数十μmにわたって分布しています。

寿命が倍増した実績|ショット数の改善

代表的な金型部品では、処理前後で成形回数(ショット数)が明確に向上しており、CWJPの効果がわかります。

 

材質 部品 処理前 処理後 向上率
SKD11 金型 9,205ショット 12,652ショット 約1.4倍
SKD61 金型 10,000ショット 16,000ショット 1.6倍
粉末ハイス 金型 77,500ショット 212,000ショット 約3倍

 

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