機能性材料セルロースナノファイバー(CNF)の特徴・用途について
セルロースナノファイバー(CNF)とは
セルロースナノファイバー(CNF)は、植物由来のセルロースを原料としたナノファイバー素材です。
(※ナノ:10億分の1)
CNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍の強度、線熱膨張は石英ガラス並みに小さいなど、優れた特性をもち、多種多様な業界での応用が検討されています。
- CNFの特徴
- CNFの製造方法
- スギノマシンのCNF「BiNFi-s(ビンフィス)シリーズ」の特徴
- CNFの用途・応用
-分散安定性と分散剤への応用
-乳化安定性と乳化剤への応用
-補強性と補強材(フィラー)への応用・・・PVA、CFRP、樹脂
-保水性
-増粘性
-化粧品用添加剤への応用
-活用業界 - CNFやナノファイバーの研究開発
- 購入方法
CNFの特徴
植物細胞壁の主成分であるセルロースは、地球上に最も多く存在する天然の高分子で、年間生産量は1,000億トン以上と推定されています。
その構造は、セルロース分子が数十本束になった幅3~4nmの微小な繊維(セルロースミクロフィブリル)の集合体です。この微小な繊維単体、または集合体が幅数十nm以下まで解されたものを総称し、CNFと呼んでいます。
■特徴
- 極細繊維です。(最小単位は3~100nm)
- 高い強度をもちます。(鋼鉄の約5倍)
- 低線熱膨張です。(石英ガラス並みに、熱による伸び縮みが少ない)
- 軽量です。(鋼鉄の1/5)
CNFの製造方法
一般的にナノセルロースの種類には、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)の2種類があり、スギノマシンの「BiNFi-s」セルロースはCNFに分類されます。
セルロースを細かくほぐすことで得られるCNFは、その解繊方法により、特徴が異なります。
解繊方法を大きく分類すると、機械的な力でほぐす「機械的解繊」と、化学薬品と機械解繊を併用した「化学的解繊」に分けられます。
用途による使い分け、応用研究が行われています。
スギノマシンのCNF「BiNFi-s(ビンフィス)シリーズ」の特徴
スギノマシンでは、産業機械メーカーとしての強みを活かし、CNFをはじめとするナノファイバー素材の製品開発と販売を行っています。
「BiNFi-s(ビンフィス)シリーズ」は、独自のウォータージェット法(WJ法)で製造しています。機械的解繊によるCNFに分類されます。
パルプ化した原料を水に分散させ、最高245MPaに加圧・噴射します。この、マッハ2のウォータージェット同士を斜向衝突させることで、原料を解し、ナノファイバーを作り出します。
標準ラインアップとして、2wt%、5wt%、10wt%の濃度をラインアップしています。
■特徴
- 連続処理による大量処理が可能です。
- 水と原料だけで製造するため、人と環境に優しく、不純物(コンタミネーション)の混入が極めて少ないです。
- 過度な粉砕を抑制できます。
- 高濃度(高粘度)や、長繊維の処理が可能です。
- 圧力や回数を制御できるため、アスペクト比など、物性の制御が可能です。
■製造設備
国内工場で、自社製装置を用いて生産しています。
クリーンルーム内で製造しているため、化粧品などへも安心してお使いいただけます。
大量処理が可能な工法のため、産業レベルでの製造が可能です。
CNFの用途・応用
CNFは、分散安定性、乳化安定性、補強性、保水性、増粘性などの様々な特性を活かして、あらゆる用途への導入や用途開発が進んでいます。
分散安定性と分散剤への応用
CNFの水中での三次元ネットワーク構造を利用し、粒子を分散安定化できます。
食品や樹脂のような軽いものから、無機物や金属のような重いものまで分散できるため、幅広い分野での応用が期待されます。
具体例として、各種無機粒子を分散させた状態を示します。分散条件にもよりますが、分散対象粒子の比重と粒子径によって分散可能範囲が決まります。
>分散安定性を示した実験動画はこちら
>分散安定性を解説したテクニカルレポートはこちら
乳化安定性と乳化剤への応用
油滴表面へのCNFの吸着および水中での三次元ネットワークにより、油滴は水中で安定化することで乳化します。
食用油から極性の低い工業用有機溶剤まで乳化できるため、幅広い分野での応用が期待されます。
具体例として、オリーブオイルの乳化状態を示します。均一に乳化しており、乳化状態は長期間持続します。
補強性と補強材(フィラー)への応用
CNFの高強度、低熱膨張、軽量、高アスペクト比といった特性を利用することで、樹脂やゴム、紙などを補強できます。
BiNFi-sは乾燥させるとフィルム状になります。このとき、繊維長が長いほど繊維同士の接点が多くなり、フィルムの強度は高くなります。
樹脂などの補強材として利用する場合も、繊維長が長いほど強度の向上が見込まれます。
PVAへのCNFの添加
ポリビニルアルコール(PVA)をBiNFi-sセルロースで補強した結果を示します。
PVAの透明性を保持しつつ補強ができています。また、補強効果は繊維長が長いほど高くなります。
CFRPへのCNFの添加
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)にBiNFi-sセルロースを添加することで疲労寿命が向上した結果を示します。
繊維長の異なるBiNFi-sセルロースを上手く使い分けることでさらに寿命が向上します。
樹脂フィラー向けのCNF乾燥粉末
水分散体(スラリー状)のBiNFi-sを樹脂と混合しやすくするため、独自に粉末化した、補強用フィラー(充填材)向けの「BiNFi-sドライパウダー」(BFDP)もラインアップしています。
保水性
原料は、ナノファイバー化することで、表面積が約100倍に増大します。
比表面積が高いほど、水と接する水酸基の量が増え、親水性が高くなり質量減少が起こりにくくなります。
BiNFi-sセルロースの中では、比較的繊維長が短いほど比表面積が高くなるため、高い保水性を示します。
また、キチンを原料としたBiNFi-sキチンはBiNFi-sセルロースと比べて繊維径が細いため、さらに高い保水性を示します。
増粘性
BiNFi-sはいずれも、せん断速度の増加に伴い粘度が低下する擬塑性流動体です。
このため、「静置時は高粘度だが、力を加えた時には粘度低下する流体」を演出できます。また、原料種や繊維長の違いによりせん断速度依存性が異なるため、目的にあったものを選択できます。
化粧品用添加剤への応用
化粧品には、保湿性、良好な触感、安定した粒子の分散や乳化など、BiNFi-sの特徴を活かした用途が多数存在しています。
具体例として、乳液とクリームにBiNFi-sセルロースを添加し、保水性を高めた結果を示します。
べた付きの少ない独特な触感を演出できます。
活用業界
このように、CNFは様々な業界で活用が期待されています。
- 化学 ・・・・・・樹脂補強材、透明材料基材など
- 電子・電機 ・・・電極材料、導電補助材 など
- 繊維 ・・・・・・補強材、バインダー材、吸着材、フィルター など
- 化粧品 ・・・・・ベース剤、保湿剤、日焼け止め など
- 食品 ・・・・・・機能性成分、増粘剤、保湿・保形剤 など
- 医薬品 ・・・・・生体適合材料、フィルム剤、止血剤 など
- 建築材料 ・・・・建材・内装材の多機能化 など
- 顔料 ・・・・・・トナー、液晶カラーフィルター、プリンター用インク、各種塗料 など
CNFやナノファイバーの研究開発
スギノマシンでは、大学や研究機関とともに、応用開発を進めています。
購入方法
BiNFi-sシリーズは、お求めやすいトライアルセットをはじめ、多種類の商品ラインアップをご用意しています。また、受託加工による大量生産も承っております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
※一部商品は、「ペーパーモール」でもお取り扱いしております。
さらに、多様なナノファイバー素材を開発・製造・販売
スギノマシンは、セルロースナノファイバーのほかに、キチン・キトサンを原料としたキチンナノファイバー、キトサンナノファイバーや、シルクを原料としたシルクナノファイバーなどを、用途にあわせてご提供しています。